佐本さんの「空手のすすめ」が「アシスト」に掲載されました。

空手のすすめ

40歳代後半の頃、私の身体は悲惨な状態だった。飲み過ぎと運動不足で、γ-GTPや尿酸値や中性脂肪などあらゆる数値が高かった。ギックリ腰に3回、肉離れにも3回なった。ゴルフに行くと、いつも途中で疲れ果てていた。久しぶりに会う人から「太ったね」と言われるのにもすっかり慣れてしまっていた。

50歳代後半の今、私の体調は10年前より格段に良い。昨年の健康診断では、全ての数値が基準値内だった。体力も筋力も柔軟性も、10年前の自分をはるかに上回っている。体重が5kg軽くなり、ウエストは6cm細くなった。久しぶりに会った人から「痩せたね」と言われるのにもすっかり慣れてしまった。

これだけ大きな変化を遂げた最大の理由は、空手を始めたことである。それは、52歳の夏、東京に単身赴任することになったのがきっかけだった。

なぜ空手を始めたのかとよく聞かれる。理由は二つ。まず、私は若い頃、何を隠そう『空手バカ一代』のファンだった。マンガやアニメは欠かさず見ていたし、映画も観に行った。学生の頃、近所の町道場に数ヵ月通った経験もある。だから空手や黒帯には憧れがあった。

もう一つの理由は、20数年振りに単身生活となり、ちょっとハードなことをやってみたくなったから。実は東京転勤の前、大阪で1年ほど太極拳を習っていた。これはこれで体幹が鍛えられてかなりキツイのだけれど、何となく単身気分とは合わなかった。もっと激しさが欲しかったのだ。

空手を始めていつの間にか5年近くになる。生活の中心に空手という核があるので、とても充実感がある。少なくとも週に一回は道場で稽古し、稽古仲間と一緒に大きな声を出し、汗を流し、身体を徹底的に痛めつける。すると、仕事で凝り固まった筋肉が次第にほぐれていき、不思議と疲れが飛んでいってしまうのだ。昨年、念願の黒帯を頂戴し、ますます空手に熱が入るようになった。

空手の良い点は、誰でも、いくつになっても、一人でもできること。空手は老若男女誰でもできる。同じ動きを繰り返し稽古するため、運動神経が鈍い人でも、歳をとってからでも空手は上達する。私は52歳で空手を始め、56歳で初段を取った。幼稚園児も元気に稽古しているし、女性会員も多い。道具を使わないので、いつでもどこでも稽古できる。だから週末は、いつも家で一人稽古をする。稽古を繰り返すことによってできなかったことができるようになるのがとても楽しい。

空手は一生続けていくつもりだ。健康のためになるし、護身にも役に立つ。何があるかわからない今日、いざという時のための備えは大切なことだと思う。先生や稽古仲間との出会いも一生ものだ。今の道場に決めたのが、代表の「うちは人生に寄り添う空手です」という一言だった。人生に寄り添える空手に出合えて良かったと心から思っている。

いかがですか。あなたも空手を始めてみませんか。